紅葉の「涸沢」、そして「北尾根」再び 投稿者:  投稿日:10月15日(水)16時40分06秒

行程  上高地--横尾--涸沢--北尾根--前穂高岳--奥穂高岳--涸沢--パラダイス新道--上高地

日程  10月10日----12日   形態 テント泊 単独


テント場の朝は早い、まだ暗闇に包まれた4時だというのに、あちらこちらのテントより朝の準備
の音が聞こえてきます。

私は昨晩は就眠が遅かったので、その音を聞きながら温々した寝袋での惰眠を楽しんでいました。

外も明るくなってきた6時に起床し、テントを開け外に出ました。すると其処には、燃えるような
紅葉に彩られた、世界が広がっているでは有りませんか。

何と素晴らしい景色ではないでしょうか、周りを穂高連山に囲まれたその風景は、何処をとっても
絵になります。 (写真−1,2)






その絶景の中で、ゆっくりとコーヒーを沸かし朝食をとりました。気持ちが良いですねー、最高で
す、心ゆくまで味わっていました。

昨日は1時半に上高地に着き、横尾経由で6時半には涸沢に着いたのですが、既に夕闇に包まれて
おり、景色を窺う事は出来ませんでした。

天気は昨日に続き快晴ですので、此の侭この景色を見続けて居たいと思いましたが、どうやら明日
は天気が崩れそうなので出発する事にしました。

そうです「北尾根」に再びです。

前回は雨と濃霧の為、いったいどんな形のピークを登っているのか、周りの景色はどんなのか、全
く窺う事も出来ませんでした。

ただ目の前に現れる難所や絶壁を、セルフビレーを取りながら必死で越えて行き、そして雨で滑り
やすくなった岩稜を滑らないように慎重に通過して行っただけでした。

だから周りの景色を含めて、どんな所を登ったのか確認したくなり、再度の縦走となりました。

5.6のコルをめざし8時に出発いたしました。写真の中央の雪渓の左横を斜め上に登って行きま
す、バックは「吊尾根」です。 (写真−3)

踏み後が結構明確に付いていますので、快適に登って行けます。前回の「奥又白池」よりのルート
より楽に登る事が出来ますよ。

一時間チョットでコルに到着しました。直ぐ其処に「奥又白池」が見えています。(写真−4)

六峰を見れば、草で覆われた穏やかな峰を見ることが出来ますが、五峰はゴロゴロの岩稜の凄まじ
い峰となっています。コル一つ境に全く様相が違います。 (写真−5)

写真では余り険しさが感じられませんが、実際はもっと凄いですよ。前回楽に越えたという思いだ
ったので、こんなに厳しかったかなと戸惑いました。

五峰の頂上に立つと、直ぐ前に四峰が見えました。これは五峰とは比較にならない位の、凄まじい
高さと、垂直に近い傾斜を持っています。 (写真−6)

圧倒的な存在感で、威圧されそうです。写真ではこれまた、その凄さが伝わりませんが、受けた印
象の10倍以上の険しさだと思っていただくと、少しは実際に近くなります。

頂上までは百メートル位は有ります、地上で30階建のビルの屋上を眺めたような感じです。

それを見て受けた私の印象は、「勘弁してよ」というのが正直な気持ちでした。これを本当に前回
「確保」も無しで登ったのだろうか、何処をどう登ったのかもう一度ルート確認をしました。

いざ取り付いてみると、前回のルートがよみがえり、さほど苦労なく登っていく事が出来ました。

この四峰の頂上から眺める、「槍ヶ岳」「北穂高」は筆舌に尽くせない、それはそれは絶景でし
た。 (写真−7)

それに「涸沢カール」へ約八百mストーンと切落ちて、何も遮る物の無い景色から受ける「高度
感」は、物凄いもので他では味わう事はできないでしょう。 写真下の方にテントが、点で無数に
写っていますが確認できますか。 (写真−8)

暫しこれから登る三峰の、困難を忘れ眺めていました。

---つづく---

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紅葉の「涸沢」、そして「北尾根」再び 2 投稿者:  投稿日:10月16日(木)17時46分42秒

正面に顔を戻すと、三峰がそそり立っていました。

何と言う凄まじく、不気味な姿なのでしょうか。「見るもの全ての者を、登頂を断念さす」とでも
申しましょうか、そんな凄みをもって立ちはだかっていました。

写真を撮っても正面からだと傾斜が良く判らないので、横に廻って撮りました。(写真−9)

写真の中央が3.4のコル、其処から左上に60度の傾斜を20メートル登ると「三峰フェース」
と呼ばれる岩の出っ張りが80度の傾斜で30メートル続き、更にその上に垂直な「チムニー」が
20メートル続いているのが写真に写っています。

写真から受ける感じでは、一番左上の垂直なチムニーまで、コルより10m位に思われますが、実
際は70mもあります。もし人間が写っていれば、米粒ぐらいにしか写りませんよ。

写真のコルの直ぐ後ろに「吊尾根」が見えます、バックには「ジャンダルム」と「奥穂高岳」が写
っています。

さあいよいよ「北尾根」の核心部分に取り付きます。ザックよりロープや確保器具を取り出し、装
着しました。

正面から眺めた姿です、頂上まで約百メートルあります。(写真−10)

「三峰フェイス」の正面より少し左を、確保しながら登っていきますが、何と足の置き場は4.5
センチの岩の出っ張りが飛び飛びにしか有りません。

そしてその足下には、ストーンと切落ちた崖と谷底が見えており、体は完全に崖の上にはみ出して
います。

確保しているのだから、落ちても大丈夫ではないかと思われるかもしれませんが。こういう場所
は、滑落すると垂直に落ちますので、瞬間的に物凄い力が岩に打ち込んだピトンに掛ります。

その力にピトンが耐えられなければいけませんが、なにしろ他人の残置ピトンに引っ掛けています
ので、どれくらいの強度か確かではないのです。

だから慎重の上にも慎重に、越えて行かなければなりません、絶対に滑落は出来ないのです。

「フェイス」「チムニー」と何とか難所を乗り越え、三峰頂上近くのテラスで一息入れました。
 (写真−11)

どんどん登っていき三峰を越え、そして二峰の頂上から、垂直なような崖をクライムダウンして来
て、振り返って撮った写真です。 (写真−12)

1時過ぎに前穂高岳山頂に到着しましたが、また誰一人いませんでした。(写真−13)

---つづく---
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紅葉の「涸沢」、そして「北尾根」再び 3 投稿者:  投稿日:10月18日(土)15時32分05秒

写真−13の前穂高岳の頂上の後ろに写っているのは、左が「ジャンダルム」中央が「奥穂高岳」
です。

またこうして「前穂高岳」の頂上に立ったのですが、やはりこのルートと言うのは、「普通の人間
の登る道」ではないなと感じました。

でも前回の濃霧と雨のときに比べ、雨で岩がズルズル滑らないぶんだけ、難易度も下がり安易にな
りました。 何しろ雨の時と言うのは、「北鎌縦走」の時もそうですが、次の一歩絶対に滑っては
いけないと言う時に、ズルと滑るのですから。

それに快晴の天気は、濃霧の時に比べて圧倒的に「気分が良い」のです。登っていて、いや「這い
ずり上がる」と表現した方が正確でしょうね、その位置から見える景色の素晴らしさに、シビレま
した。

やはり有る程度のリスクを背負わねば、見られない風景と言うものはあります。

さて頂上でザイルや確保器具をザックに収め、そして昼食を取り、ゆっくりと休憩しました。

暫し休憩の後、出発いたしました、西の方に昨年縦走した西穂高岳がはっきりと見えます。(写真−14)

「吊尾根」に行くのには、一度「紀美子平」まで降りないといけません。降りてまた登ってくるの
も大変なので、直接尾根をトラバースし「吊尾根」に降りて行きました。  其処より振り返った
「北尾根」の写真です。(写真−15)

中央が「五峰」その左が取り付け口の「5.6のコル」、右端が「三峰」その左が「四峰」です。

「奥穂高岳」を目指し「吊尾根」を行きます。(写真−16)

かなりの時間が過ぎ、西の空が赤くなってきました。「西穂高岳」をバックにしたその景色は、何
とも幻想的で素晴らしく、暫し其処に立ち止まって、その暮れていく様子を眺めていました。
 (写真−17)

---おわり---
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